歯を抜けた状態のまま長期間放置おくと、周囲の歯(主に両隣)が抜けている空間方向に傾いてくることがあります。(歯は移動する組織です。動くからこそ歯科矯正治療が成り立ちます。歯が勝手自由に動くこと、イコール歯並びは不都合な方向に向かっていると言っても過言ではないでしょう。)また、抜けた歯の部分と今までかみ合っていた歯(上顎の歯が抜けた場合は下顎の歯、下顎の歯が抜けた場合は上顎の歯)にも影響し、歯並びが時系列的に悪くなっていきます。そのような状態は歯周組織(歯ぐき・顎の骨・歯根膜・セメント質)に負荷がかかり、むし歯や歯周病とも関連影響することとなり、残った歯まで失うことになります。
患者さまにおかれては、どなたも入れ歯にはなりたくないものでしょう。しかし入れ歯をしか治療法がない時もあります。そして入れ歯は痛くて咬めないとか、入れ歯は硬いものは咬めないとか、世間的にはあまり入れ歯の評判は良くありません。しかし、お口全体の治療計画をしっかり立てて、適応症にあった入れ歯を選択して作製すると、入れ歯でもかなりしっかり咬めるようになります。せっかく作製した入れ歯を装着せずにいる事は歯並びの維持を失うことにもなりかねません。
入れ歯作りには、時間と手間がかかり完成までにおよそ4~6回程度(約1ヶ月)かかります。入れ歯は歯科医師および歯科技工士と共同して作ります。そして精密な入れ歯を患者さまご自身の歯の代わりとして使うには、さらに数回の調整が必要となります。
入れ歯の種類はレジン製(プラスチック様樹脂)だけではありません。色々なタイプがあります。例えば、変形の少ない金属を多様することで、薄くて強度があり、違和感・異物感の少ない入れ歯(金属床義歯)を作製することも可能です。また目立つ金具バネ部分がない(または少ない)審美性を考慮した入れ歯も作製可能です。その他、磁石(マグネット)式入れ歯、柔軟性のある入れ歯、インプラントと入れ歯を組み合わせたタイプ等さまざまなパターンがあります。
症例 ノンクラスプデンチャー:目立つ金具バネ部分がない(または少ない)審美性を考慮した入れ歯
以前に保険診療によるバネつきの入れ歯を他院にて作製されましたが、異物感のため長年装着しないまま放置されていました。
今回当院にて金属バネのない違和感・異物感の少ないタイプの入れ歯を作製いたしました。
症例) 健康保険適用 部分入れ歯
健康保険適用の部分入れ歯におきましては、お口の中で入れ歯を保持するために、「クラスプ」という金属のバネを残った歯にひっかける必要があります。そのためその金属が目立つことが多く、審美的(見た目)な問題が残ってしまいますが、健康保険適用ではこのタイプの部分入れ歯しか作ることが出来ません。
お食事をされた場合の、『モノを噛む能力(咀嚼能率)』は、天然の歯の約20~30%程度です。